VOICE vol.75
齋藤 真名美
Manami Saito
--- わあ~たくさん作品持ってきてくれたんですね!
こんなに持ってきても載せてもらえるのがあるかどうか・・・。
--- 大丈夫ですよ!あとでセレクトしますけど、ちょっと見せてくださいね。・・・実習で撮ってるのが多い・・・?
そうなんですよ~。それにちょっと旅行の写真が混じってるぐらいで。普段は・・・ほとんど撮ってないんです・・・。
--- 撮ってないの?(笑)
やらなきゃいけないんですけどね(笑)。
--- そっか(笑)。「撮影に行こう!」って撮る感じですか?
そうですね。最初はゼミナール初級で「日録」の課題が出たから、仕事の行き帰りやお昼休みに撮ったりしていたんですけど、いつも同じ道を通るからだんだん飽きたというか、変わり映えしないというか・・・。新鮮な気持ちになった時の方が撮りやすいですね。本当はみなさんみたいに日常生活を撮りたいんですけど・・・。
---う~ん、あまり気にしないで撮ればいいんじゃないかな。「これ撮ってもおもしろくないかも」とか「つまんないって言われるだろうな」とか気にしすぎちゃってるとか?
そうそう。探しすぎちゃって自分で撮っててもおもしろくないっていうか。
--- でも秋からデジタルコースですよね?デジタルにするとフィルムで撮るよりは、気軽にシャッターを切れるようになるんじゃないかな?
そうですね、やっぱりデジタルに変えたら撮る枚数は増えましたね。
--- そういえば、そもそもどうしてデジタルに?
もともと写真とかカメラとか・・・すごくこだわりがあるわけじゃないんです。「こうしたい!こうなりたい!」っていう思いがあって入学したわけじゃなかったから、フィルムでもデジタルでもどちらでも良かったんです。ただこれから写真を続けていくのに、デジタルの方がいろいろ考えないで続けていけるんじゃないかって思って。物を揃えるにもデジタルだったら苦労がないですけど、フィルムはあれが製造中止とか、値段が上がったとか・・・そういうところで大変かもと。写真が続けられるなら形態にこだわりはないんです。
--- そういうことなのか~。フィルムが嫌とかカラーが良いとかそういうことじゃなくて、継続的な展望としてデジタルをやっておいた方がいいなっていう判断なんですね。
展望、っていうとカッコイイですね(笑)。ただそういう理由で「デジタルやっておいた方がいいかな~」って感じで(笑)。
--- (笑)。
それでコンパクトなんですけど、デジカメも買ったんですよ。そうしたらフットワーク良すぎて、どんどん撮る写真が変わっちゃうんですよね。気軽に撮れすぎちゃうっていうか・・・。
---あ~最初デジタルに替えたときは「失敗しても大丈夫」って意識がどこかにあってちゃんと見ないで撮っちゃって、こんなに撮ったのに良いのが全然ない!っていう事態に陥ったなぁ~。
わかります~!今まさにその状態なんです。なんかちゃんと被写体と向き合わなくなっちゃって、撮ってから後で見てみてもおもしろくないなって思うものばっかりで。
---フィルムでの撮影時のようによく見て撮るっていう感覚のままデジタルのシャッターの軽さで撮っていくっていうスタイルにならないとね・・・。だからフィルムを知らないで、デジタルだけで始める人ってそういう点では撮影の感覚を身につけるのって大変だと思うんですよね。
なるほど~そうですよね。一生懸命見るって感覚は身につけづらいかも。枚数だけがただ増えるだけで・・・。あとは、とりあえず撮ってはいるものの、まだプリントしてないんですよ。それに加えて新しいカメラの画角にすら慣れていないし、デジカメの設定のこともよく分からないから、今のまま撮り続けても大丈夫なのか自信が持てないんですよね。プリントって写真を作る工程で半分以上を占めるじゃないですか。撮ってプリントしての反復作業でだんだんそのカメラに慣れたり、自分の撮影スタイルが決まってきたりするような気がして。そういえば、暗室作業ってちょっと職人的で「作ってる」感じがすごくするけど、デジタルの場合はプリント作業がモニターに向かってるだけだから、なんとなく物足りない感じはあるんですよね~。
---それはそうですよね~。フィルムは手をかけるから達成感はすごい。ただデジタルはそのフットワークの良さと、プリントに対しての時間の使い方が上手くできるという点ではいいなって思ったり。やっぱり便利だし(笑)。
便利ですよね~(笑)。ただデジタルを始めたばかりで、プリントの仕方がいまいちわからないんですよね・・・。
--- う~ん。デジタルで撮ってプリントはどうするつもりなんですか?モノクロ?カラー?
それなんですよね~。さっきもちょっと話したんですけど、ホントはなんでもいいので・・・、どうしようかなぁ。
---あの、そのあたりがちょっと不思議なんですけど・・・写真は好き?
そこなんですよ(笑)。
---わはは(笑)。そこですよね(笑)。
どうして通ってんだろうって(笑)。 暗室とかで話していると、みなさんちゃんと思い入れがあって続けてるんだなって感じるんですよ。それを思うと私はそこまでの思いってないなぁって。例えば「好きな写真家は○○」とか話したりしますよね?でも私は特別好きな写真家さんもいないし・・・。写真の見方もまだまだわからないし・・・。
---写真を見れるようになってくるのはこれからだと思うけど・・・でも斉藤さんの気持ちってわたしはちょっと分かりますよ。写真でどうこうなりたい!というよりはライフワークなんじゃないのかな?
そうそう!入学した時も強い思いがあったわけではなくて、続けられる趣味がほしかったからなんですよ。 そうしたら意外に続いたので、せっかくだからもっと続けていきたいなって思って。
--- いいんじゃないかなぁ、それで。みんながみんな写真家を目指さなきゃいけないわけじゃないし、写真をやっていることで、楽しかったり、生活のバランスがとれたりするだけで、写真をやっている意味はあると思うし、好きなんだろうと思いますよ。ただまぁなんで学校通ってまでやろうと思ったのかはちょっと気になります。
あ~それは、旅行が好きで、旅先でもうちょっとちゃんと撮れたらなっていうのもあるんですけど・・・。社会人になってから、習い事は何個かしてたんですね。ヨガとかお料理とか。それも楽しかったんですけど、もう少しこう実用的じゃないものというか、ただ純粋にやりたいことだけをやるっていう趣味がほしいなって思って。
--- それいいよね。無意味なことって楽しいよね!
ははは(笑)。 そう!そう!
--- 日常生活に必要不可欠じゃないもの、「これ別にいらないんだけどさ~」っていうものって、おもしろい(笑)。
そう!それが欲しかったんですよ(笑)。 でもそれは写真の勉強を始めて実用性とかから開放された中で、そういうものが自分の中で欠けてたんだな~って気づいたんですよね。
---それはきっと余裕ができたんですね~。写真もそうだけど、そういうのって「余裕」の部分だから。仕事も慣れてきて、生活のペースもできてくる頃だし。20代前半はそんなこと気づかなかったもんなぁ(笑)。いっぱいいっぱいで記憶があまりない(笑)。そしていつの間にお局に・・・(笑)
それイヤですね(笑)。お局になってることに気づかないと(笑)。
---あ、わたし最近やっと気づいた(笑)。
(笑)。 でもそういうのだけじゃなくってなんで続けてるのかなって考えると、やっぱり友達がいるっていうのは大きいです。暗室に行けば誰かいて、おしゃべりして・・・。いろんな職業や環境の人がいて、たくさん影響を受けるし、みなさん意外に写真の他にも習い事してたりして、そういうお話を聞くのも楽しいんですよね~。だからデジタルにして一番不安なのは、暗室に行かなくなってひとりでプリントするようになったら、どうなっちゃうんだろう?さぼっちゃうかもって・・・。寂しいし・・・。
---友達がいるから・・・は多いですよね。教室の暗室のがやっぱり使いやすいし、みんなの作品見れるし、お話もできるし・・・って、わざわざ自宅に暗室作ったのに、教室に通う人もいたりしますもんね。斉藤さんは行き詰まったり、寂しくなったら授業なくても遊びにくればいいですよ!家近いんだし!
そっか!ちょうど帰り道だし!・・・でもとにかデジタルくプリントは早くしてみたいなぁ。
--- 写真って本当にプリントしないとわからないですよね。写真を始めるまではきっとこういう風には思ってなかった気がするけど・・・。
ぜんぜん思ってませんでした~。撮影100%で。撮りっぱなしが多くて、特にデジタルは液晶で見て満足しちゃってた。でも本当にちゃんと撮れているかどうかはやっぱりプリントしてみないと分からないですよね。
---やっぱりそれは「作品をつくろう」という意識がどこかにちゃんとあるからだと思うんですよ。
私にも芽生えてるかな?(笑)友達と遊んだりした時に撮った「記念写真」とかに対してはそうは思わないんだけど、それ以外は紙で出したくなりますよね~。やっぱり最後はそこに行き着くのかな。
--- 作品となるとなんとなく物質として手に取りたいというか・・・。
そうかも。モニター見てるだけだと「作品」って感じがしないですよね。何だか軽い、というか。紙にプリントをして形として出来上がった時に、初めて作品という気持ちになりますよね。
---ホント、そうですよね~・・・今日、すごい真面目に写真の話してるな~(笑)。
いつもどんなインタビューしてるんですか?(笑)
---ん~いつも考えて話してるわけじゃないんだけど・・・。その人の仕事とか好きなこととかに興味津々で、そんな話ばっかり。2時間ぐらい話して、写真の話が15分ぐらいの時もある(笑)。斉藤さんにも聞いちゃおうかな~・・・。「こだわりがない」って言ってたけど、こだわってることとか、すごく好きなものとか趣味って全くないんですか?
ん~食べ物も好き嫌いないし、今は写真しかやってないし・・・。
---あ、アクセサリーとか?いつもスゴイかわいいのしてるし!
え~そうですか?アクセサリーは・・・うーん、いつも同じものだしなぁ。あ、お洋服を買うのは好きですね。でもこれは趣味でもないか・・・。
---いや、「必要以上・自己満足」で買ったものは趣味に属すると思いますよ。無意味だし(笑)。わたしもですから、あ、わたしは靴だけど(笑)。だから買い方とかにもこだわりがあるんじゃないかな?
・・・好きなスタイリストさんがいて、その人のトークショーに行ったりしてるんです・・・実は(笑)。その人のお気に入りのセレクトショップにも、通ったりしてるんですよ。
---え~それはスゴイ!スタイリストさんが好きってことは、そうとうお洋服好きなんですね~。そのお店教えて~。
お洋服っていうかその人のお洋服の趣味とか・・・なんていうか、仕事しながら子育てもして、とてもポジティブで、それでいておしゃれなんです。そういうのがいいな~って・・・。あ、お店はですね○○○というところです。新宿にありますよ。
--- 行ってみる!・・・その方の生き方に憧れてるんですね。でもそれは憧れるなぁ!
そうなんです、憧れてるんです、きっと。
---若いんだから、これからですよ!結婚も出産も、仕事も!きっとなれる。
そうかなぁ~なれるかなぁ・・・?
--- 大丈夫!それに寂しくなったら、教室においで。お菓子用意して待ってるから(笑)。
うん、そうしちゃおうかな(笑)。
聞き手:木下マリ子